ニュースファイル
当事務所に所属する弁護士が関わった事件の事例報告や、マスコミ等で報道された記事を紹介します。
国政調査に関する件についてお諮りいたします。
本委員会は、今期国会におきまして、行政制度、公務員制度、地方行財政、選挙、消防、情報通信及び郵政事業等に関する調査を行ってまいりましたが、先般の参議院規則改正に伴い、調査事件名を行政制度、地方行財政、選挙、消防、情報通信及び郵政事業等に関する調査と変更いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
<○委員長(山本香苗君)
御異議ないと認め、さよう決定いたします。
○委員長(山本香苗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(山本香苗君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
行政不服審査法案外二案の審査のため、本日の委員会に東京大学大学院法学政治学研究科教授宇賀克也君及び弁護士・立命館大学法科大学院教授斎藤浩君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山本香苗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────
○委員長(山本香苗君) 行政不服審査法案、行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び行政手続法の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。
三案について、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。
なお、行政不服審査法案は衆議院において修正議決されましたので、この修正部分につきましても併せて政府から説明を聴取いたします。新藤総務大臣。
○国務大臣(新藤義孝君) 本日は閣僚かりゆしデーでございますので、どうぞ御理解をお願いいたしたいと思います。
行政不服審査法案、行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び行政手続法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
まず、行政不服審査法案につきまして御説明申し上げます。
この法律案は、行政庁の処分又は不作為に対する不服申立ての制度について、公正性及び利便性の向上等を図る観点から、その抜本的な見直しを行うものであります。
次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
第一に、審理の公正性の向上を図るため、原処分に関与した者以外の者の中から審査庁が指名する審理員が審査請求の審理を行うこととするとともに、裁決に当たっては、原処分又は裁決のいずれかの段階で他の第三者機関が関与する場合や審査請求人が希望しない場合等を除き、法律又は行政に関して優れた識見を有する者で構成される行政不服審査会等に諮問することとしております。また、審査請求人等が証拠書類等の写しの交付を求めることができることとするなど、審理手続における審査請求人等の手続保障を拡充することとしております。
第二に、国民の利便性の向上を図るため、不服申立てをすることができる期間を現行の六十日から三か月に延長することとしております。また、審査請求及び異議申立てを審査請求に一元化するとともに、個別法における特別の定めにより、再調査の請求及び再審査請求の手続を設けることができることとしております。さらに、審査庁は、標準審理期間を定めるよう努めなければならないこととするとともに、審理を計画的に進める必要がある場合に事前に争点等を整理するための手続を設けるなど、審理の迅速化のための措置を講ずることとしております。
なお、行政不服審査法案は、衆議院において一部修正されており、その内容は、「政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」ことであります。
次に、行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして御説明申し上げます。
この法律案は、行政不服審査法の施行に伴い、三百六十一の関係法律について、審査請求及び異議申立てを審査請求に一元化すること等に伴う規定の整備を行うとともに、国税、関税等について、審査請求の前段階で処分庁が簡易に処分を見直す手続である再調査の請求を、社会保険、労働保険等について、審査請求の後に更に第三者機関等が審理を行う手続である再審査請求を設けることとしております。また、不服申立てに対する裁決を経た後でなければ訴訟を提起することができないこととする、いわゆる不服申立て前置について、不服申立て件数が大量にあるもの等を除いて廃止するとともに、二段階の不服申立てを経なければ訴訟を提起することができない仕組みは全て廃止するなど、所要の規定の整備等を行うこととしております。
次に、行政手続法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
この法律案は、行政不服審査法の改正に併せ、国民の救済手段を充実、拡大させる観点から、不服申立ての対象とならない処分前の手続や行政指導に関する手続について所要の規定の整備を行うものであり、法令に違反する事実の是正のための処分又は行政指導を求めることができる処分等の求めの手続や、法令に違反する行為の是正を求める行政指導の相手方がその中止等を求めることができる行政指導の中止等の求めの手続を新設することとしております。
以上が、これらの法律案の提案理由及び内容の概要であります。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いをいたします。
○委員長(山本香苗君) 以上で三案の趣旨説明及び衆議院における修正部分の説明の聴取は終わりました。
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(山本香苗君) 速記を起こしてください。
これより質疑に入ります。
本日は、三案の審査のため、参考人の方々から御意見を伺います。
この際、参考人の方々に委員会を代表しまして一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ、当委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
参考人の皆様方から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、お一人十五分程度で、宇賀参考人、斎藤参考人の順に御意見をお述べいただきました後に、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
また、発言の際は、挙手をしていただきまして、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。
なお、参考人、質疑者共に発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず宇賀参考人にお願いいたします。宇賀参考人。
○参考人(宇賀克也君) 東京大学の宇賀と申します。本日は、行政不服審査関連三法案について意見を述べる機会を与えていただきましたことに御礼申し上げます。
行政不服審査法は、その前身である訴願法に代わるものとして一九六二年に制定されました。行政不服審査法の制定は、訴願法と比較すれば画期的な改革であったと言えると考えておりますが、その後、半世紀以上が経過し、行政不服審査法の抱える様々な問題点が明らかになり、その抜本的な改革の必要性は行政法学界ではほぼ共通の認識となっております。
政府におかれましても、行政不服審査法の大幅な見直しの必要性を認識され、長年にわたる検討を積み重ね、二〇〇八年に行政不服審査法の全部改正案を国会に提出され、その後、前政権の下におきましても同法の抜本的な見直しの検討が行われ、さらに現政権の下におきまして、二〇〇八年法案を基礎にしながら、前政権の下での検討結果や各界からのヒアリング、パブリックコメント等の結果を踏まえて、更に改善された法案を今国会に提出されました。現行の行政不服審査法と比較して、多くの点で国民の権利救済を向上させる内容になっていると評価しております。
以下、行政法の研究者の立場から、行政不服審査関連三法案による改善点について述べさせていただきます。
第一に、一九九三年に制定されました行政手続法における手続水準との格差を解消する措置が講じられている点でございます。
行政手続法は行政過程における事前手続の一般法であり、行政不服審査法は行政過程における事後手続の一般法と言うことができます。行政不服審査法制定時には行政手続法は存在しませんでしたので、事前手続との比較という視点は存在しませんでした。しかし、行政不服審査法制定から約三十年後に制定されました行政手続法は、その間の適正手続についての国内外の認識の向上を反映して、行政不服審査法と比較して手続水準を向上させております。その結果、行政手続法と比較して、行政不服審査法の手続水準の不十分さが明確に認識されるようになりました。
そのため、今国会に提出されました行政不服審査法案におきましては、行政手続法の聴聞主宰者の制度を参考にした審理員制度を採用し、審査請求に係る処分に関与した者等は審理員となれないこととすることとされております。
また、行政手続法の標準処理期間の制度に範を取った標準審理期間の制度を設け、行政手続法が申請に必要な情報の提供の努力義務を行政庁に課したことを参考にして、不服申立てに必要な情報の提供の努力義務を不服申立てにつき裁決等をする権限を有する行政庁に課すこととしております。
行政手続法が定める文書等閲覧請求権に比較して対象が大幅に限定されておりました審査請求人等による文書等の閲覧請求権も拡充することとされております。
なお、この点につきましては、行政手続法においては閲覧請求権にとどまり、写しの交付請求権は認められておりませんが、行政不服審査法案におきましては写しの交付請求権まで認められており、単に行政手続法との手続水準の格差を解消するにとどまらず、むしろ行政手続法の手続水準を超える内容になっております。
第二に、二〇〇四年に大幅に改正されました行政事件訴訟法との救済水準の格差の解消を図る措置が講じられていることが挙げられます。
行政不服審査法と行政事件訴訟法は共に一九六二年に制定されており、行政救済二法と称され、密接な関連を有しております。したがいまして、二〇〇四年に行政事件訴訟法の大幅な改正が行われました際に、併せて行政不服審査法の大幅な見直しを行うことも考えられました。
しかし、この時期が行政手続法の重要な改正の検討時期と重なり、行政管理局としては行政手続法の改正に優先的に取り組む必要があったため、行政事件訴訟法の一部改正法附則による行政不服審査法の改正は、執行停止の要件の緩和と職権による教示を書面で行うことの義務付けにとどまりました。
他方、今国会に提出されました行政不服審査法案には、二〇〇四年の行政事件訴訟法改正を参考にした重要な改正内容が含まれております。二〇〇四年改正前の行政事件訴訟法におきましても、法令に基づく申請に対して不作為の状態が継続している場合の救済のために不作為の違法確認訴訟が法定されておりましたが、この場合、不作為が違法であるので何らかの処分をせよという判決が出ましても、許可処分せよという判決を出すことはできません。そのため、不作為が違法であることを確認する判決が出されましても、その後、拒否処分がされる可能性があり、そういたしますと、申請者は改めて拒否処分の取消し訴訟等を提起しなければならず、救済制度として迂遠なものでございます。このような場合、申請を許可することを義務付ける訴訟を一定の要件の下に提起し得ることは学説、裁判例の認めるところでございましたが、法定されていない訴訟類型でしたので、かかる訴訟を提起しても認容される可能性は実際にはほとんどございませんでした。
二〇〇四年に改正されました行政事件訴訟法におきましては、いわゆる申請型義務付け訴訟が法定され、法令に基づく申請に対し不作為の状態が継続している場合、直接許可処分を義務付ける判決を求めることができること、そしてその要件が明確になりました。
今国会に提出されました行政不服審査法案におきましては、この申請型義務付け訴訟を参考にして、不作為についての審査請求がなされた場合には、不作為が違法又は不当であり、かつ当該申請に対して許可処分をすべきものと認めるときは、不作為庁の上級行政庁である審査庁は当該不作為庁に対して許可処分をすべき旨を命じ、また不作為庁である審査庁は許可処分をすることとされております。すなわち、現行制度の下において、不作為についての審査請求に対して不作為が違法又は不当であるから何らかの処分をせよという裁決の後、拒否処分がなされ、さらにその取消しを求める審査請求をしなければならないという事態が生じ得る不備が是正され、救済の実効性が向上することになり、大変望ましいと考えております。
同様に、申請拒否処分がなされた場合におきましても、二〇〇四年改正前の行政事件訴訟法の下におきましては、申請拒否処分の取消し訴訟で請求が認容されましても、別の理由で再度拒否処分がなされる可能性があり、その場合、改めて拒否処分の取消し訴訟を提起しなければなりませんでしたが、二〇〇四年の改正により取消し訴訟と許可処分の義務付け訴訟を併合提起することによって紛争の一回的解決を図る道が開けました。
御審議中の行政不服審査法案におきましても、申請拒否処分の取消しを求める審査請求がなされた場合、審査庁は、申請許可処分をすべきものと認めるときは、処分庁の上級行政庁である審査庁であれば処分庁に許可処分をすべき旨を命じ、処分庁が審査庁であれば自ら許可処分をすることになり、紛争の一回的解決が可能になりますことは大きな前進であると考えております。
二〇〇四年の行政事件訴訟法改正は、環境を汚染している企業に対して改善命令を出すことの義務付け訴訟を周辺住民が提起するような場合を念頭に置いた非申請型義務付け訴訟も法定いたしました。これを念頭に置き、今国会に提出されました行政手続法の一部改正案におきましては、処分等の求めの制度を設けることとされております。
また、二〇〇四年の行政事件訴訟法改正は、行政庁が一方的に国民の権利を制限し、又は国民に義務を課す処分を対象とした訴訟である抗告訴訟中心主義への反省から、処分に当たらない行政作用に対する救済の受皿として公法上の当事者訴訟としての確認訴訟を明記して、その活用を促しております。
このことも踏まえまして、行政手続法の一部改正案におきましては、行政指導の中止等の求めの制度及び処分等の求めの制度において、法律に根拠のある行政指導を対象としております。このように、行政不服審査法案及び行政手続法一部改正案におきましては、二〇〇四年の行政事件訴訟法改正の成果を踏まえて、救済の拡充を図ろうとする姿勢を見て取ることができます。
最後に、今国会に提出されました整備法案につきましても意見を述べさせていただきたいと存じます。
整備法案の内容も多岐にわたりますが、実質的に見て最も重要なのは、不服申立て前置の見直しであると言ってよいと思われます。一九六二年に制定されました行政事件訴訟法は、その前身である行政事件訴訟特例法が取っておりました訴願前置主義、すなわち、まず行政上の不服申立てである訴願を提起し、その裁決を経てからでないと訴訟を提起できないとする原則を廃止し、行政上の不服申立てと訴訟を国民が選ぶことができる自由選択主義を採用し、例外的に個別法で不服申立て前置を認めることといたしました。
行政事件訴訟法の立法過程におきましては、いかなる場合に例外的に不服申立て前置を認めるかについての指針も設けられておりました。不服申立て前置を認める法律は、行政事件訴訟法制定時は五十一でしたが、その後、半世紀の間にほぼ倍増いたしました。
今回、この不服申立て前置の例外を認める指針自体を見直し、新たな指針が策定されましたことは大変意義深いことと存じます。今国会に提出されました整備法案におきましては、不服申立て前置を定める九十六法律のうち六十八法律で不服申立て前置を廃止又は縮小し、二重前置は全て廃止されることになります。不服申立て前置は憲法で保障された司法救済を遅らせる面がございますので、真に合理的な理由がある場合に限り限定的に認められるべきものと考えております。
また、不服申立て前置が廃止され、訴訟と不服申立ての自由選択が認められますと、そこで制度間競争が生ずることも考えられます。このことを再審査請求を例に取って説明させていただきます。
行政不服審査法案におきましては、個別の法律に定めがある場合には再審査請求を認めておりますが、再審査請求の前置は廃止することとされておりますので、再審査請求と訴訟を選択することができることになります。
もっとも、再審査請求制度の利用の場合には手数料は掛からないのに対し、訴訟の場合には手数料が掛かること、訴訟手続の理解が困難な場合には弁護士に委任する費用が掛かること等、制度間競争と申しましても両者は完全にイコールフッティングにあるわけではございませんが、救済の見込みのない制度は、たとえ安価であったとしても、国民から選択されなくなる傾向が強まることは明らかと思われます。したがいまして、国民が再審査請求するよりも訴訟を提起する方が救済の実効性が相当に高いと考えれば、訴訟を選択する者が増加することが考えられます。
こうして再審査請求制度が利用されなくなれば、当然、当該再審査請求制度の存続意義が問われることになり、廃止すべきとの意見が出てくるものと思われます。したがいまして、国民から選択されるように、再審査請求制度による救済の実効性を向上させるインセンティブが再審査請求制度の所管省庁や再審査請求の審理に携わる委員にも付与されることになると考えられます。
このことも今回の不服申立て前置の見直しの大きな意義であることを指摘いたしまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。
御清聴どうもありがとうございました。
○委員長(山本香苗君) ありがとうございました。
次に、斎藤参考人にお願いいたします。斎藤参考人。
○参考人(斎藤浩君) 斎藤でございます。
意見を述べる機会を与えられまして、本当に感謝いたします。
私、平成十六年六月一日、今、宇賀先生が述べられました行政事件訴訟法の改正のときにも参議院の法務委員会に呼ばれまして、参考人意見陳述の機会を与えていただきました。
行政事件訴訟法、行政不服審査法という我が国の行政争訟法の二本の柱につき、大改正の是非の意見を述べさせていただくことは大変名誉なことであります。
私の意見は、どちらの機会にも政府提案法案の賛成の立場からのものであります。
改正前の行訴法の下での行政訴訟はほとんど死に体でありましたが、改正後は、まだまだ不十分でありますものの、積極的判決も現れております。他方、現行法下の行政不服審査は、国レベルの救済率が一〇・六%、地方レベルが二・八%でありますから、国民も我々実務家もほとんどこれに期待することはありません。衆議院での政府答弁の中で、救済率が低いのは日本の行政がしっかりしているからだとの趣旨のものもありましたが、それは国民的な評価とは懸け離れたものではないかと考えます。裁判所での行政訴訟の救済率が一〇から一七%でありますから、本来は旧制度、現行制度の下でも行政不服審査での救済率は二〇から二七%程度は行くべきであったものであり、そうなっていなかった原因を取り除き、改正法の下では三〇%以上程度になることを期待するものであります。
さて、今回の行政不服審査法等の改正案につきましては、衆議院で質疑と参考人陳述が行われ、かなりの程度その内容の審査が行われております。また、今日は宇賀克也先生の包括的意見陳述も今ございまして、私の改正案全般の内容についての意見は四月二十五日の読売新聞「論点」欄に詳しく開陳しておりますから、以下、私は一点に絞って申し上げることといたします。
それは、私が行政不服審査法の体系の中で最も重視する点、すなわち事案の判断者の独立性のことであります。
衆議院での政府答弁の中で審理員の自己反省機能に力点を置くものもありましたが、国民にとりましては、これまでも行政による自己点検の結果、救済されていなかった歴史でありますから、自己点検より公正性の方に軸足を置いていただきたいものであります。この点での今回の改正案は、審理員、行政不服審査会という二重構造で公正性の担保を図るもので、現行法からの大きな改革であります。この一点を取りましても早期の法案の成立を望むものであります。
私がこれから申し述べる意見は、この担保をより強力にするための運用の構築のためであります。すなわち、審理員は原処分に関与した者以外の者であり、衆議院の政府側答弁では、国については原局でない官房系、総務部門系の管理職クラスになるであろうと言われております。地方にあっては、その公共団体の力量に応じ、外部からの弁護士、税理士などをもって充てることも考えられるのではないかと言われております。また、行政不服審査会では、国の九名の委員は三チームに分かれて、各チームに一名常勤委員が当たり、非常勤委員は行政OBや外部の専門家をもって充てる、地方にあっては委員会の設置も含めて柔軟に対処し、総務省からマニュアルやサポート体制を改正法実施までに徹底すると言われております。
私は、審理員については、国のレベルでも、まして地方のレベルでも、次のような問題点が残ると考えております。それは、審理員が原処分に関与した者以外の者であっても、その人々が大臣や首長の当該行政分野における方針、政策から独立して判断できるものとは残念ながら思えない点であります。国民もそのように見ているだろうと思われます。
そこで、審理員も国、地方を問わず任期付公務員制度を活用するなどして、外部からの人材を登用することに充てるべきだと考えます。最近の法科大学院は行政法が必須科目となっておりますから、その修了生などをもってこれに充てることも社会的財産の活用という点では考えられないものではないと思われます。
次に、行政不服審査会です。
国レベルの委員の数が九名であることは、過去の実績から審査会に来る案件を年間二百件程度と想定してのことだと思われますが、衆議院ではそのように答弁されておりますが、この度改革をして多くの案件が来ることを期待する改正法の構えとしては少な過ぎ、将来の改正の機会に増員されるべきであると考えます。また、常勤、非常勤を問わず、外部の専門家、学者、弁護士などを中心とする選任が期待されます。
日弁連では、二〇〇七年韓国、二〇〇九年台湾、二〇一一年アメリカと、二年ごとに行政争訟制度の調査団を出し、いずれも私が団長を務めてまいりましたが、その中から今日は韓国とアメリカの制度を御紹介してみたいと思います。
まず、韓国ですが、かの国の行政審判法の下では、不服申立てがあれば裁決は最終的な裁決庁が行うものの、原則として、全ての案件は、国レベルでは国務総理行政審判委員会に送られ、委員長を含む五十人の委員が判断します。地方レベルでは、裁決庁に各十五人の委員から成る一般行政審判委員会が置かれ判断します。裁決庁は委員会の意見に拘束されます。委員は弁護士、副教授以上の学者、行政OBから選ばれ、弁護士、学者が圧倒的であります。認容率は二〇%を超え、統計によっては三〇%を超えております。我が国の二倍から三倍であります。
アメリカは、行政法審判官、ALJによる準司法的解決です。審判官は法曹資格を持つ準裁判官で、完全に行政から独立しています。国レベルでは全国で千七百人以上が採用されています。国レベルでは各省ごとに置かれ、私たちが調査できた三つのALJ、労働省関係ですけれども、労働安全審査委員会というところのALJは三千件以上を扱い、労働関係委員会と言われるところでは三百件以上扱い、その他の労働省本体では六千件以上の案件を扱っています。これに加えて、地方レベルの様々なALJが存在します。
なお、来年、日弁連が調査を検討しておりますドイツでは、税務の異議審査手続で、国及びほとんどの州において執行部門とは別の法的救済部門が設けられております。社会保険関係の異議審査手続で、被保険者及び雇用者の代表から成る異議審査委員会が設けられております。多数決によってそこでは決められて、法分野ごとの多様な救済制度となっております。
以上述べましたように、判断者の独立性は非常に重要であり、その信頼性を得てこそ国民は不服申立ての意思を持ち得、自らの権利を守り、行政の適法性を目指していきます。したがいまして、審理員においても、審査会委員においても、行政外部から独立した専門家を得ることが適切である旨の附帯決議などを是非考えていただきたいと思います。
最後に、行政不服審査が国民のために成功裏に運用されるために、改正法成立後、総務省におかれて多くの力が注がれますことをお願い申し上げまして、私の陳述といたします。
ありがとうございました。
○委員長(山本香苗君) ありがとうございました。
以上で参考人の方々の意見陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。
○石井正弘君 自由民主党岡山選挙区の石井正弘と申します。よろしくお願いいたしたいと思います。
宇賀参考人、そして斎藤参考人には、大変貴重な御意見、御提言をいただきました。厚く御礼を申し上げる次第でございます。大変審議の参考になった思いがしているところでございます。
この度の行政不服審査法の関連三法案は、本当に、お話がございましたけれども、五十年以上たちまして、国民の皆さんに対してしっかりとこの権利を救済していこうと、様々な課題がある中で三つの大きな観点、すなわち公正性を向上させていく、あるいは使いやすさ、これも向上させ、国民の権利救済手段を充実、拡大していく、こういう大きな目的でということであるわけでございます。こういった観点から、今回提案されている法案でございますけれども、まず宇賀参考人にお伺いいたしたいと思います。
参考人は、民主党政権時代にありました行政救済制度検討チーム、このメンバーの一人として議論に参加されたと、このように関係資料から、私、拝読させていただきながらそのようなお話をお聞きしたわけでございますけれども、そのときに、独立性が強い審理官制度、これを創設するような、そういう行政不服審査法の改革というものも取りまとめられたやに承知をしているわけでございます。そして、その後様々な経緯を経てこの度の法案の提出というふうに至ったと承知しているわけでございますが、そういった経緯の中で今回のこのような法案の形になった、その経緯の中におきまして、この法案につきましての思いとかあるいは評価、さらには課題といったものにつきまして考えがございましたらお聞かせを願いたいと思います。
○参考人(宇賀克也君) 行政救済制度検討チームの取りまとめでは、審理官制度というものを提言しておりました。この当時は、言わば政治主導ということで、事前に共同座長の方から案が示されまして、もうその中で行政不服審査会制度というものは取らないという前提でございましたので、そういたしますと、審理員制度だけでは公正中立性にはとても十分ではないということで、独立性の高い審理官制度が必要であるということになったというふうに理解をしております。
私は、審理員制度と審査会制度、行政不服審査会制度がセットであれば、行政不服審査会という第三者機関によって公正中立性というものがかなり担保されますので、政府案のような考え方でも大きな改善になるというふうに考えております。
他方、この審理官制度につきまして、審理員制度と用語が似ているために、これは審理員と同じような補助機関であるという、そういう前提から審理官制度に対して疑問が提起されることがあるんですが、私の理解では、審理員というのは大臣の補助機関ですけれども、審理官の方はこれは諮問機関であると。ちょうど難民審査参与員という独任制の審査機関がありますけれども、それと同じであるということで、そしてまた、府省横断的なものを、これをいわゆるセントラルパネルと言うんですけれども、これも、府省横断的な諮問機関というものは、内閣府の情報公開・個人情報保護審査会、公文書管理委員会、そしてこの法案の総務省行政不服審査会など全てそうであるわけで、府省横断的な諮問機関を設けるということは全く問題ないわけで、それが合議制の機関か独任制の機関かの違いだけであると考えておりますので、このような審理官制度というものも法制的に十分可能だと考えておりますので、国会、この委員会におきましても、こうした審理官制度につきましても今後の検討課題として位置付けていただければ大変うれしく存じます。
○石井正弘君 ありがとうございました。
今回の法案の形であれば、やはり具体的な人選、公平公正な運用ができるような、そういったところにこの法案が、運用がしっかりと国民の権利救済に結び付くかどうかの一つの大きなポイントがあるというふうに考える次第でございます。大変ありがとうございました。
それでは続きまして、斎藤参考人にお伺いいたしたいと思います。
斎藤参考人は昭和二十年岡山県生まれということで、私と全く同じということで、何か不思議な御縁も感じるような感じがしておりますけれども、今、先ほど御意見をお聞かせいただきました。まず、読売新聞、私も拝読させていただきました。御紹介一部ございましたけれども、認容率について、国の方が認容率一〇・六パー、地方公共団体が認容率二・八パーと御紹介がございまして、本来、もっとこの数値が高まるべきではないかと、このようなお話もあったわけでございます。
こういった中で、政府の方におかれまして、この平成十七年以降の大体の傾向を見ても、やはり大体の傾向としては国の方では一〇%強、それから地方公共団体は五%程度で推移していると、このような答弁を私は見たわけでございますけれども、こういった認容率の違いというものにつきまして、いろいろこれも事情があろうかと思いますが、参考人はどのように受け止めていらっしゃいますでしょうか。
○参考人(斎藤浩君) 国の方がやや高い、私が申し上げている点ではどちらも低いんですけれども、やや高いというのは、衆議院でも審議がありましたように、情報公開とか税金の関係でその傾向が現れております。逆に、地方の方は、地方税は国税不服審判所のような制度ではなくて、もうまさにこの行政不服審査法がそのまま適用される制度で、なかなかこの認容率も上がってこないというような違いもございまして、どうしてこのように大きく、低い中でも国と地方の数字がこんなに大きく違うのかというものの研究は私自身もできておりませんし、今まで小早川、宇賀先生を中心とする研究会がいっぱい行われましたが、なぜかということは余り研究がなされておりませんで、すぐに答えられる力量はございません。
○石井正弘君 ありがとうございました。
具体的に行政事件訴訟の裁判の方の事例の数値と比較しながら御紹介、御説明がございましたので、やはり大変これは参考になる御意見だというふうに私も考えているところでございますが。
一方で、今、斎藤参考人がおっしゃられました、外部人材を審理員あるいは第三者機関へ積極的に登用し、独立性を更に高めるべきであるとの御意見でございます。それは、考え方としてはうなずけるものがございますけれども、一方で、全国知事会が、昨年の五月三十一日付けで意見書が出ておりまして、これを見ると、審理員制度につきましても、やはり行革等でいろいろ公共団体によっては課題があると。その事務の効率性、迅速性を損なうおそれがあるんではないかと、さらには、第三者機関につきましては、これは審理の長期化につながって、簡易迅速な救済という観点からは目的に相入れないのではないだろうかとか、行革等の問題も併せ、懸念材料として指摘しているわけでございます。
国の方については、確かに御意見はよく分かるんですが、地方公共団体も、非常に大きな都道府県、そして市町村におきましても規模が様々であるわけでございまして、小さな地方自治体ということを考えますと、なかなか理想的に御意見どおりにはいかないという面も実態上あるんではないかと思いますが、そういった中におきまして、外部人材登用も含めた地方公共団体に対しての何かアドバイス、御意見がございましたら、お聞かせいただきたいと思います。
○参考人(斎藤浩君) 私がつまらない意見を申し上げてこの法案が通らないのは一番困りますので、極力控えなければならないわけでありますが、知事会が言われることは当然のことであります。それは、自らの方に不服審査が向いて矢が飛んでくるわけでありますから、それはなるべく飛んでこない方がいいのに決まっておるわけでありますから、そのような御意見になろうと思いますけれども、やはり国際水準ということを考えていただきたいと。それは、韓国、台湾、アメリカと続き、ドイツ、来年行きますと、その場その場で恥ずかしい思いを私どもは訴訟についても不服審査についてもするわけでありまして、なぜこのような立派な国でこのような審査体制しかないのであろうかというのが、もうこのような国、立派な国というのは日本のことですけど、諸外国を回ると思うのであります。
今日御紹介したのは一端でありますけれども、そのような先進国あるいは先進国を目指そうとしている国が、先生方の中には、それを重装備とおっしゃいます、重装備の装置を抱えて、やっぱり国民の権利救済と、その結果として行政の適法化、適正化のために構えをつくっているという、やっぱり国際水準というのがありますから、今回の法案は是非通していただいて、その審理員と、構えられております審査会というものの中でできる限り国際水準性を取り入れていただきたいというのが私の願いでありまして、通していただきたいということはもう最初の願いでありまして、その次に運用の改善で今日申し述べましたので、その点御理解をいただきたいと思います。
○委員長(山本香苗君) 時間が来ておりますので。
○石井正弘君 どうも貴重な御意見ありがとうございました。
これで終わります。
○難波奨二君 民主党の難波奨二でございます。
お二人の参考人、大変貴重な御意見ありがとうございました。時間がもう十分という短い時間でございますので、端的に質問をしてまいりたいと思いますが、まずお二人にお伺いいたします。
ただいまもございましたように、法ができまして半世紀がたっておると。そして、先ほど宇賀参考人の方からもございましたけれども、この法律に関する、取り巻くこの間の具体的な事象も御説明いただいたわけでございますが、なぜ半世紀にわたって見直しがなされなかった、その要因というのはどこに大きいものがあるか。先ほどから諸外国の話もございますけれども、あわせまして、我が国の問題点、どこにあったかと、お二人に御認識をお伺いしたいと思います。
○参考人(宇賀克也君) この法律に限らず、我が国では一般的に行政通則法の根本的な見直しというのはなかなか行われません。ようやく最近になりまして、法律を制定する際に、あるいは全部改正の際などに一定期間後の見直し規定というものが入れられるようになり、今回も衆議院で五年後の見直し規定が入ったわけでありますけれども、やはり公務員も日常の業務に追われていますので、やはり国会から一定期間を目途に見直せと言われないと、なかなか見直しの契機を自ら見出していくということは難しいんではないかなと考えております。
したがって、私の考え方は、五年後の見直しという規定が入ったのは大変結構なんですけれども、これはこの法案に限らず一般論といたしまして、行政通則法的な法律というのは大体もう十年ごとに見直すと。こういう五年後の見直しということになりますと、そこは一生懸命やるんですけれども、その後また長期間たってしまうということが予想されますので、やはり情報公開法にしてもそうですし、行政手続法にしてもそうですが、こうしたやっぱり社会経済情勢、非常に急速に変化していく時代ですので、決して不磨の法典ではなく、十年ごとに見直すというようなことを入れておけば、附則に入れておけば、附則といえども法律の一部ですので、随分その辺りは変わってくるのかなと考えております。
○参考人(斎藤浩君) 行政に対して国民が不服を申し立てる制度として二つあって、行政不服審査と行政訴訟と。
まず、先に三十七年法が大きく変わったのが行政事件訴訟法であります。そのときもほぼ全党派の先生方の御賛成を得て可決されたと記憶しておりますけれども、それは裁判所が、どの先生の目から見ても、もちろん国民の目から、その背景におられる国民の方々の目から見ても機能を果たしていないと。国民が行政訴訟を起こしてもほとんど敗訴するというのでは、また諸外国ですけれども、諸外国水準を全く満たしていないというので、塩野座長の下で検討会が行われて、立派な改正、我々はまだそれでも足らないと言っておりますけれども、行われたと。
それで、今、宇賀先生おっしゃった、五年見直しの規定が入っておりましたので、五年見直しの四年ぐらいたったときに法務省に行きまして、当時の審議官が対応され、いつも審議官が対応されますが、申し上げますと、そろそろ五年目ですねというふうに言いましても、いや、まあ五年目ですが、法務省、またこういうことを言うのがいいのかどうか分かりませんが、法務省というのは小さい省庁である、外の風が吹かないと一切この改正などは無理なんですと、こういうことを自分らが言うのはおかしいですけど、日弁連さんを始め国会議員の先生方が改正しろという世論を起こしてくださいよとおっしゃいました、行政事件訴訟法については。
世論を起こすにもなかなか、元々負けているわけですから、国民はほとんど関心がございませんので、一部の大訴訟は別として。世論はなかなか起こりませんで、一部の熱心な先生方と共にお願いをいたしまして、やっと五年見直しのときに運動を構築したんでありますが、そこでまた研究会が行われまして、五年見直しをする必要がないということになりまして、もう約十年近くたっていくということになります。
これは、裁判所がどうするかということを決めるところでありますから、そういうことでありますが、この行政不服審査法は行政が行政を裁くわけでありますから、行政にそれだけの意欲、熱情があるのかということになりますよね、結局は。裁判所はどうするかということじゃなくて、自分のところがどうするかということですから。
ですので、先ほどの委員の御質問は、非常に私は申し上げたいこともう山ほどございますけれども、それをここでぶちまけたらまたマイナスの効果になってもいけませんので、もうこの程度にさせていただいて、意のあるところを察していただきたいと。
○難波奨二君 それでは、またお二人にお伺いしたいと思いますけれども、確かに、救済率を上げることが目的ではなくて、国民の皆さんがやはり利用しやすい、納得感のある、こうした制度が重要なんだろうというふうに思いますけれども、行政不服審査の情報公開の在り方、これについてどのような御見識をお持ちか、お伺いしたいと思います。
○参考人(宇賀克也君) 大変重要な点だと思います。
裁判所の判決につきましては、全部ではありませんけれども、かなりのものが公開されるわけです。これに対しまして、行政不服審査の場合には、その裁決とか決定で公開されていないものがむしろ圧倒的に多いわけです。もちろん、公開する場合に、その当事者がおりますので、その個人情報とかあるいはその法人等情報については十分注意する必要があるわけですけれども、そうした部分を削除した上で積極的に公開をするということが是非重要だというふうには考えております。
○参考人(斎藤浩君) 今の宇賀先生の御意見、全く異論がございませんので、付け加えることだけ申し上げますと、衆議院の審議の中でもそのことが問題になって、国のレベルではやはりできる限りの公開ということがもう既に答弁されておりますけれども、問題は地方でございます。
先ほどの自民党の先生に対する質問の答えがちょっと抜けていた点もあるので、それも含めて申し上げますと、今回の法案のいいところ、すばらしいところは、地方についての配慮が私の目から見たら非常によく行き届いている点だと思います。それは、地方の力量に応じて審査会もやればいいんだよということになっておりますから、審理員もそうだというふうになっておりますから、委託も可能だし、共同でも可能だという、非常に柔軟な案になっておりまして、大変立派な法案だと思います。
そうはいいましても、その場合に、臨時で設けられるそういう制度だとか、ほとんど案件がないときにぽっと出てきたやつについての対応についてどのように情報公開していくかという点についての、こういうふうに全国の地方公共団体ですべきであるという意見はまだ強い意見が述べられていないと思いますので、今後の参議院の審議の中でその辺りも是非先生方の御質疑をいただきまして、地方における配慮に基づいたもう一つの配慮で、やはり国民が情報公開されてどういう案件があるのかということを知ることができるようにしていただいて、万全を期していただきたいというふうに思います。
○難波奨二君 もう一分ほどしかございませんけれども、最後は斎藤参考人にお伺いいたしますけれども、日弁連の方では、今回の行政不服審査法改正に伴いまして、出入国管理及び難民認定法の改正案につきまして御懸念を表明されておられますけれども、簡単にその中身をお教えいただきたいと思います。
○参考人(斎藤浩君) 日弁連会長が五月二十三日付けで会長声明まで出しておりますので、是非、先生方におかれましても、入管当局におかれましてもそれを参考、尊重していただいたら有り難いと思いますが、その内容は、今日も審議されます整備法の七十五条、これは入管法の改正のところでありまして、口頭意見陳述について定めた行政不服審査法の今度の法案の三十一条についての入管法の読替規定が定められております。
口頭意見陳述を行わなくてもいいとする場合について、本体の行政不服審査法の三十一条一項ただし書の範囲は明確でありますけど、それに加えて、入管法の方では更に拡大する規定を法務省がお入れになっております。入管分野は、国家高権、広い裁量権の考え方が強い分野でありますが、そうであればあるほど手続規定は整備し、その上に立って国家意思を示す必要があると考えます。その意味からは、この整備法の読替規定には私は疑問を持っております。
しかし、その一点をもって整備法に反対することはできません。どうすればよろしいかということを簡単に申し上げて終わりますが、衆議院の審議で入管局長は、運用で現在より後退することはないと答弁されておりますけれども、その姿勢を多としつつ、それではやや心もとないので、次のようにできないかということを申し上げます。
入管分野で日々頑張っている同僚弁護士や入管実務に直面している当事者の皆さんが納得でき、その方々も含めて本法案全体に賛成していただくために、この読替規定については、参議院での附帯決議などをうたっていただき、現状より後退せず、行政不服審査法改正の趣旨を踏まえて、より前進的に運用されるような国会の意思を表明していただければ大変有り難いというふうに考えております。
○難波奨二君 終わります。済みません、ありがとうございました。
○若松謙維君 公明党の若松謙維です。宇賀参考人、斎藤参考人、大変御苦労さまです。
まず、私と同じ年に生まれました宇賀参考人にお尋ねいたします。
先ほど斎藤参考人が諸外国のお話をされましたが、同じような観点で恐縮ですけれども、宇賀参考人から見て、この法律が改正されることによって、いわゆる諸外国との比較なんですけれども、結局は利便性、あとスピード、そうしたいわゆる運用の公開、透明性というんですかね、ここら辺がポイントとなると思うんですけれども、どう改善が期待されるでしょうか。
○参考人(宇賀克也君) 先ほど斎藤参考人からもお話ございましたように、現在の我が国の行政不服審査の制度というのは、諸外国と比べますとかなり見劣りがするということは事実でございます。今回の改正により、審理員制度と、それからそれとセットで行政不服審査会の制度が設けられるということによって、かなり諸外国とのギャップといいますか、格差というものを解消することができるのではないかというふうに考えております。
私はアメリカに留学しまして、三十年ほど前に行政法審判官について研究し、さらに行政法審判官のセントラルパネルシステムについても研究しまして、非常にそのときに強く思いましたことは、アメリカではそういう行政手続を主宰する者というのがプロフェッションとして確立をしております。そして、そのプロフェッションとして確立した方たちの団体もできているわけですね。それに比べまして、我が国ではその手続を主宰する者についての関心が余りにも薄かったというふうに思います。ようやく行政手続法で聴聞主宰者の制度ができ、今回、審理員の制度ができて、手続の主宰者についての関心が高まってきたということは大変結構なことかなと思っております。
○若松謙維君 今のプロフェッションですか、専門家ということですけれども、じゃ、これは斎藤参考人にお尋ねしますが、弁護士、プロフェッションですけれども、私も実は公認会計士をやっていまして、いわゆる公会計という必ず議論が起きるんですが、実際にやはり公会計の会計の考え方とか理論ですね、民間ですか、営利企業とは大分違うんですね。ところが、同じ公認会計士でも公会計を勉強している専門家はおりません。ですから、結局なかなか改善されないと、これが現実で、今おっしゃったプロフェッションですか、弁護士として、例えば同じ業界内にしっかりと研究会なり、認定制度とか、何というんですかね、そういうものをつくってやっぱり審理員というのを充実させるとか、何かそんなお考え、おありでしょうか。
○参考人(斎藤浩君) 私、日弁連の行政訴訟センターの前の委員長をしておりまして、その関係を構築しようと今、日々努力しておりますけれども、まず単位弁護士会においても、そういう専門制度を設けている単位会も出てきておりますけれども、日弁連では、むしろ今度の行政不服審査法の改正に合わせて、中央は立派な国家公務員の方々が知恵をこれから絞られるでしょうから、成立してから、やはり地方に対して何らか援助を我々でできないだろうかということで、地方のそういう事件があったときだとか、共同でだとか、県に委託してだとかやられるときにも、この行政不服審査法のことを熟知した弁護士を派遣しますよというような制度も設けて、なかなかアメリカのようにはすぐにはいかないんですけど、我々が提案しております行政不服審査院のような重装備、今回の法案でも重装備だという批判がある方面からあるように、我々の日弁連はもっと重装備ですけど、それは韓国、アメリカのいいところを全部寄せた重装備案でありまして、どうして、そういうプロフェッショナルなものを常時用意しておいて、案件が来たときにはそれを活用するという制度がこの国で取れないのかなということを常々考えておりまして、今実践しておりますので、今先生のおっしゃったことを更に持ち帰りまして研究したいと思っております。
○若松謙維君 今、重装備と、何ですか、斎藤参考人がいわゆるこの日本の文化的なところまで今触れられたと思うんですが、ちょっと考えながら今質問作っておりますので、ちょっと御両人どちらに質問するか分かりませんが。
実は私の問題意識は、特にこの行政手続法です、いわゆるノーアクションレターですか、こういうものが導入されたということで、ちょうど私は平成十年のときに衆議院にいたんですけれども、中央省庁改革基本法、これができました。
そのときの議論は何かというと、結局、各省庁に設置法がありますと。設置法は何々省というのはこれこれをやるということです。これはあくまでも権限規定はないと。こういうことを私も三代の総理に確認したんですけど、結局、実際に実行すると、行政は細かい、マニュアルというんですか、手続と通達を作って、やっぱりそれを業界なり国民に、何というんですか、本当にメッシュのようにどこも隙間なく網を掛けると。
そういう中で、国民がこの行政不服審査法を活用するんですが、結局、最初から、何ですか、非常に防衛というんですか、そういう、この行政側の方が問題指摘されないように重装備をするというんですか、そういう文化に対して、ある意味で、普通は、例えばアングロサクソン系ですと、裁判所を使ってかなり議論をしてそこを開けていくというか、空白っていっぱいあるんですけど、日本は最初からそういう文化を国民が受け入れるということもあって、恐らくこの行政不服審査法が改正されても、本当に国民に使いやすいものにできるかどうかというのが、文化というんですか、制度面からなかなかハードルが高いんじゃないかという問題意識があるので、それについてちょっと御両人に聞いてよろしいでしょうか。いいですか。
○参考人(宇賀克也君) 行政不服審査法の改正が実現したときのその後の運用の問題ということかと思います。
おっしゃるとおり、いかに制度が改正されましても、実際にそれが適切に運用されていかなければ意味がないわけで、そのためには、今回の改正の趣旨について、全ての公務員に対して徹底的に研修を行っていく。そしてまた、国だけではなくて地方公共団体においても、今回の改正の趣旨を徹底して、そして国民がこの行政不服審査制度というものを利用するということに対しての抵抗というんでしょうか、それを官の側でもなくしていくということが重要だと思います。
不服審査をするということは、決して官にあらがうとかという、そういうふうな受け止め方ではなくて、国民の当然の権利の救済であると、そのために行政不服審査制度というものを使いやすくするという、そういう意識ですか、それを広めていくような、そういう広報活動とかあるいは研修というものを充実していただきたいというふうに思います。
○参考人(斎藤浩君) 若松先生の御質問で、本当に勉強になる御質問をしていただきました。
それを私の頭で整理しますと、行政のための重装備はもう日々行われているけれども、国民のための重装備は行われていないというふうに私は取りまして、これは諸外国と後者において大いに違う。法案を作るのも、日本では官僚の方が作られるわけですから重装備は徹底しておりますけれども、国民救済、そして行政の適法化のための重装備は消極であるというのが、現法案でもまだその傾向は日弁連案と比べますとありますけれども、随分と改善されて、審理員、審査会制度を設けていただきましたので、その点がもう随分と大きな前進でございますから、その程度にとどめたいと思います。
○若松謙維君 すごく適切な反応、ありがとうございます。
斎藤参考人に、もうこれ最後の質問になりますが、独立性ということを強調されたと思います、さっきですね、斎藤参考人ですね。実は、これも、済みません、公認会計士という観点から、監査をする際にやはり独立性が求められます。そのためのチェックリストをかなり埋めて、それでオーケーならば監査できると。ですから、監査している会社の株を持っていないかとか、親戚がいるかどうかとか、そういうのがあるんですけど、私はこの審理員の独立性を担保するかなり大事なことじゃないかと思っています。そのためのまず運用マニュアル、そして案件ごとに、チェックリストっていうんですかね、これが最低必要じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○委員長(山本香苗君) 簡潔にお願いいたします。
○参考人(斎藤浩君) これから総務省において御努力をされると思いますけれども、もうすぐ分かることは、特に審理員について、その今先生がおっしゃったようなチェックリストが案件との関係ではできると思いますけれども、それ以外の点でのチェックリストというのは、もう衆議院での答弁に表れておりますように、先ほど私が申し上げたような方々が審理員になるわけですから、そういうチェックリストというのはなかなか難しい、地方においてはもっと難しいと思いますので、その点はこれから先生方においての運用のチェックを国会においてしていただきたいと思います。
○若松謙維君 ありがとうございました。
○寺田典城君 寺田でございます。よろしくお願いします。
宇賀先生、斎藤先生、どうもありがとうございました。大変勉強になりました。
国の情報公開法というのは一九九九年に施行されましたけれども、地方の情報公開条例というのは、それこそ一九八〇年代から施行されて条例ができてきて、私の場合は、一九九五年に、地方の市役所だったんですけれども、情報公開条例を出させていただいたんです。
なぜかというと、要するに、役所というのはある面での強者というか、後ろに行政権持って、みなし規定という公定力というんですか、みなしを規定して物を進めていっちゃうという。だから、国民的には主権は在民といえども、ある面では、何というんですか、それに従わざるを得ないと。だから、徹底した情報公開になると、そういう点では、ある面では明らかにされてきて、役人もある面では助かる面もあるし、しゃきっとしてきたというのは私の地方行政から見たあれなんです。
その中で、先ほども話、話題になりましたけれども、国の認容率は一〇・六、地方の団体は認容率は二・八とかになっているんですね。役所の行政手続優れているからこの程度だよなんて言う人もいるんですけれども、外国の救済率、韓国は三八・四って先ほど出ておったんですけれども。
私は、これをもっと、要するに公正にするためには、できれば可視化と録音、全てとは言いません、これを検討してみる必要があるんじゃないかなと思っている。録音なんか、今これでしゃべっていることがすぐ文章になって出てくる機械ありますから。その辺どう思いますか、お二方に。
○参考人(宇賀克也君) 昔は、国におきましても、審議会等様々な会合につきましてはこれは非公開で、議事録は内部では作っていても公開されなかったわけです。この点につきましては今大きく変わりまして、多くの審議会等が今公開で行われておりますし、議事録もその発言者名入りでホームページに載るということが一般化してまいりました。
このことは大きな改善であろうというふうに思いまして、やはりおっしゃられたように、審議過程の透明化ですね、これがやっぱり非常に重要だろうというふうに思いますし、また、情報公開法ができまして、その辺りも随分、施行されて既にもう十年以上たっておりますので、意識が変わってまいりました。
今後の課題といたしまして、例えばアメリカにありますような連邦諮問委員会法とかサンシャイン法とか、そういったことは課題かと思いますけれども、やはりその審議過程をできる限り透明化して、そして国民に公開していくということを一層進めていく必要があるというふうに考えております。
○参考人(斎藤浩君) 宇賀先生のお答えに付け加えることは一切ございません。
○寺田典城君 確かに、審議会では意思形成過程まで情報開示するところも、自治体もたくさんありますよ、それはだからいいことだと思うんですが、それはそれとして。先ほど、可視化はいかがですか、録音はいかがですかと聞いているんですよ。それ、どう思います。
○参考人(宇賀克也君) 録音というのは、審議会については当然録音をしているわけですよね、発言を。そして、それをテープを起こして公開しているわけですけれども、ほかの例えば職員の会議とか、例えば職員だけで行っている会議とかいうのは、確かに今はそこまでは録音はされていません。
そこをどこまでやる必要があるのか、これはもちろん内部の会議であっても非常に重要なものというのはあると思いますので、そういったものについてはそういうことも当然考えられるかと思います。
○参考人(斎藤浩君) これも余り付け加えることないんですけど、論議をしておりますのは、国レベルで、行政事件訴訟法の次の改正などで今先生のお尋ねのようなことも少し議論をしておりまして、例えば処分をするときの処分の経過のところを、議論を録音しておいて可視化してそれを発表させるような方法をするのはいかがかということを検討は日弁連でしておるんですけれども、これは行政出身の弁護士もそこにはいっぱい入っておりまして、またこれも言葉が過ぎてはいけませんが、そのようなことをするとますます情報が出にくくなるように頭のいい人たちがやる可能性があるので、その制度構築にはもうよほどのこと、考察が必要だと。今警察との関係でやっておりますあれとはまた別でございまして、一般行政についてのものはまだ私ども固まった意見がございませんで、本当に申し訳ございません。
○寺田典城君 ですから、行政不服審査の事案で、役所という、役人というのは独特なんですよ、とにかく時間も考えないしコストも考えないという。それから、不作為な不利益与えてみても、けろっとしていますし。それと、作為的な不利益もあるんですよ。もう書類の数こんなにして、これ読んでから来てみろとか、例えば私が質問しても、一分でできる質問を十分も掛けて長く長くやってほかの方に逃げてしまうとか、全てがあるんです、そういう役人の習性というのは。
だから、ある面では、録音とか可視化することによって一番すっきりするのが、緊張するのは役人の方なんですよ。役人がみんなデータも持っているし、組織もあるんです。
それで、審理員の話なんですが、弁護士会さんの方では別の人が第三者的に任期付採用でもいいんじゃないのかなんて言っているんですが、確かにあのNHKの人事なんていうのはお友達人事みたいなもので、籾井会長なんか自分の支持以外の人は使いたくないなんてはっきり言うぐらいのことなんで。
やっぱり審理員の独立性というと、これはやっぱり役所というのは上下関係、内部の中って独特の感覚なんです、役所というのは。私だって市長をやったとか知事やっておったが、つかみ切れないからですよ。秘書はどこから持ってくるかというと教員の方から持ってきたりしていましたから、そうすると市長部局の人事権が及ばないのでね。そこまでしなければ物を変えていけないと。でなきゃ第三者を連れてくるとかね。
だから、そういう点も含めて、審理員の在り方についてももう少し検討した方がいいんじゃないかなと思うんですが、いかがですか。お二人に。
○参考人(宇賀克也君) 私も、審理員については外部から任期付きで例えば弁護士の方を採用するというようなことを積極的にやるべきでないかと思っております。
最近、いろんな仕事をしておりますときに、任期付きの弁護士の方が行政の内部で活躍されているのを拝見する機会が多く、非常に立派に仕事をされております。外から来られて、行政についての専門的な知識が欠けているんじゃないかというような、そういうことが言われることもありますけれども、見ている限り決してそういうことはなくて、立派にそういう任期付きのその職員の方が仕事をされていますので、審理員につきましてもそういう方たちの積極的な採用は重要ではないかなと考えております。
○参考人(斎藤浩君) 意見でも申し上げましたように、提案者の方でこの審理員が独立しているんだということを胸を張って言われるときに、原局でない官房系、総務部門系の管理職クラスだから大丈夫ですとおっしゃる感覚がまず分からないですね、私には。そういう方こそ大臣の御意向を見て判断されるわけでありますから、答弁自身に矛盾があると思いますけれども、しかし、今までは処分していた人が起案したという、それと比べたらまあいいのかなというので、日弁連で賛成するかどうかは、もう大変な議論をした上で賛成しているわけでありまして、やっぱりそういう運用はもっともっと知恵を出していただいて、今、宇賀先生もおっしゃって、私も意見で申し上げましたように、なるべくなら外の方を審理員の方も取り入れていただきたいというふうに思っております。
○寺田典城君 組織の中で審理員は活動しなきゃならぬのですから、本当に立場上はやはり、何というんですか、非常に厳しい立場に置かれると思います。だから、役所はいい面もあるんですが、基本的にはやはり仲間というか、その流れの中でやってしまうということだけは認識していただきたいと思います。それを理解している人は、ここの中で首長さんやったことある人はおりますので、もしよかったら、そのとおりだと思う人は手を挙げてみてください。
まあ、質問を終わります。
○渡辺美知太郎君 みんなの党の渡辺美知太郎です。
今日は、宇賀先生、斎藤先生、お忙しいところお時間いただきまして、ありがとうございます。
今ちょうど質問をしようと思っていたことを宇賀先生に言われてしまいまして、ちょっと続きの質問をしたいと思っていまして、外部の行政審理員のお話ありました。法律関係の学者や弁護士を中心に任命するということで、私、純粋にちょっと興味を持ったのが、実務面での担保ということで今、宇賀先生がおっしゃっていましたけど、例えば学習院の櫻井先生などは、やっぱり行政のことは行政マンじゃないと分からないだろうという指摘があるのですが、今ちょっと宇賀先生のお話を聞いていると、別に行政の経験がなくてもこういった審理はしっかりできるとおっしゃっていました。
この審理員の場合は、そういった実務面での担保というのはどのようにして行われるのかなと思ったのでちょっと私興味を持ちまして、例えば斎藤先生がさっき韓国の例を出していまして、韓国では行政OBが審理員にもいると。そういった例えば行政OBを就けることによって実務経験の知識や経験を担保する、あるいは、そういったものがなくても、外部の独立した第三者であっても適正な判断が行われる、それとも、行政マンの常識にもうとらわれないで柔軟な発想をするためにあえてそういった行政の経験者とは関係ない方を就けて柔軟な審理をするといったことも考えられると思うんですが、ちょっと実務面についての担保はどのようにされるのかなと興味を持って、別にこれはけちを付けるわけではなくて、純粋にちょっと興味を持ったものですから、宇賀先生と斎藤先生にちょっと伺いたいと思います。
○参考人(宇賀克也君) 確かに、審理員として審理を行う場合に、法的な知識だけでなくて行政実務に関する知識というのも重要だと思います。
その点に関しましては、一つにはその審理員を補佐する体制ですね。その中で、そうした補佐する職員によって、そうした実務面で仮に足りないところがあればそこでサポートしてもらうということも考えられるかと思います。それからまた、事案によりましては例えば外部の弁護士の方とそれから例えば行政のOBの方というのが、その審理員というのもこれ複数ということが否定されているわけではございませんので、場合によってはその両者でチームになって補い合うというようなことも考えられるかと思います。
○参考人(斎藤浩君) 櫻井先生がそのようにおっしゃっていることは私も重々知っておるんですけれども、少し認識の違うところもあって、勉強すれば分かるという話です、我々の立場は。
それで、ALJに行きまして、私もその質問を随分ぶつけまして、ALJは全ての行政分野を分かるのかということをやっぱり言うわけですね。そうすると、それは全て分かるわけではないと、しかし勉強すれば済むと。しかも、ALJの研修制度を設けてそこで勉強して専門性に対処すればいいので、専門性がないから行政OBでないと駄目だとか、行政マンでないと駄目だとか、そういうことは考えたこともないという答えが返ってきましたので、それは参考にすべきだと思います。日本の行政マンは非常に優秀ですから、その方が意欲を持ってそれに当たられることは反対はいたしませんけれども、それに加えて外部の力も借りる方がいいというふうに思っております。
○渡辺美知太郎君 ありがとうございます。
最初から実務が分からないからやめるべきだという話ではなくて、やっぱり第三者の公平性を担保すべきというところだということはよく分かりました。
それで、宇賀先生にお聞きしたいのは、今後の課題についてちょっと伺いたくて、先ほど行政通則法の例えば十年ごとの再検討をやはりすべきだということをおっしゃっていましたけど、ほかに何か今後の話で、斎藤先生のお話はもう聞いたので、ちょっと宇賀先生からも今後の課題点について、是非、もしありましたら御指導いただければなと思います。
○参考人(宇賀克也君) これは、行政不服審査制度の検討会の報告書でも指摘されておりますし、また日弁連の意見書の中にも含まれていたというふうに理解しておりますけれども、アメリカのALJですね、行政法審判官につきましては資格制度というものがあるわけでございます。このような審判官の資格制度というものがやはり将来の検討課題ではないかなというふうには考えております。
○渡辺美知太郎君 ありがとうございました。
ちなみに、行政通則法の見直し規定で、先生は十年ごととおっしゃっているんですが、十年でよろしいものなんでしょうか。何か、長いとか短いとかちょっと思ったものですから。ちょうどいい期間になるんでしょうか。
○参考人(宇賀克也君) 最初の法律を制定した際、それから全部改正した際ですね、そのときはやはり、その法律がどういうふうに運用されるかということについて未知な部分が多いものですから、四年とか五年ぐらいの見直しが適当だと思います。今回は五年後の見直しというので、それはそれで結構だと思うんです。しかし、その後また五年後というのもなかなか大変かと思いまして、しかし、十年たったところでやっぱり社会経済情勢の変遷に対応した見直しが必要ではないかということの検討は重要だと思います。
例えばアメリカの場合ですと、情報公開法を大体十年ごとに大きな改正、重要な改正をしているんですね。ですから、やっぱり日本でも大体、通則法については十年たったらやはり見直すということで、五年後の見直しですとその後が続きませんので、やはり十年ごとの見直し、最初は五年、その後十年ごとの見直しというのが適切ではないかなと考えております。
○渡辺美知太郎君 ありがとうございます。
今、海外の事例もおっしゃっていましたけど、十年ごとにその見直しだけではなくて、大きな例えばもうがらっと変えるといったことも視野に入れられているんでしょうか。
○参考人(宇賀克也君) そうですね。見直しをした結果、かなり大きな改正が必要になる場合もあるでしょうし、あるいはそれほど大きな改正でなくて小さな改正で済む場合もあるでしょうし、場合によっては運用の改正で済む場合もあると思います。それはケース・バイ・ケースかなと思います。
○渡辺美知太郎君 ありがとうございました。終わります。
○吉良よし子君 日本共産党の吉良よし子です。参考人の皆様、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
まず最初に、審査制度の一元化に関わって、斎藤参考人にお伺いいたします。
本改正案により、異議申立て制度がなくなり、国税通則法や公害健康被害の補償に関する法律などに再調査の請求を導入することとなっています。
政府によりますと、異議申立てに代わって再調査の請求を置くことで大量の異議申立てが直接審査請求先に行くことを避けることや、より簡便で迅速に処分を見直すことで救済を図ろうというものであるということですけれども、本法案を見ると、異議申立てで認められていた参考人の陳述や処分庁による検証、審理関係人への質問などが再調査の請求になると行われなくなると。これは国民の権利利益の救済についての後退につながってしまうのではないかと考えるのですが、この点について参考人の御意見を伺いたいのですが。
○参考人(斎藤浩君) 申し上げます。
二重の救済制度がいいのか悪いのかというふうにまず制度を見直す場合には考えますと、その場合に、審査請求と異議申立ての二重の制度というのが本当に必要なのかということを大半の法分野で考えまして、これはもう一本化して審査請求だけでいいんじゃないかというふうにまず考えました。我々も考えました。総務省も研究会もお考えになったと思います。それで、異議申立ては全廃されるかと思うと、再調査というちょっと言葉が適切でないネーミングの言葉になって登場はしておりますけれども、それは残ったと、こういう全体の流れであります。
その中で、今先生がお尋ねの、幾つかの法分野において今まで異議申立て手続であればできていたものが再調査手続ではできないということがあれば、それはもう法律の再改正の課題か、各法律のそれか運用の課題として審査請求と同様に当然その手続は認めるべきであるというふうに私は考えております。
○吉良よし子君 ありがとうございます。
関わってなんですけれども、本法案では、再調査の請求を申し立てるか審査請求を行うかどうかというのは申立て者の自由選択とされますけれども、再調査の請求は、先ほど述べたとおり、異議申立てと比べ、より簡便な手続、簡易な手続となっており、丁寧な審理を求めるのであれば審査請求を選択するしかないと。しかし、それは、例えば公健法などに係る申立て者らにとっては上京しなければならないような事態になるなど、相当に大きな負担が強いられるのではないかと考えられます。
そこで、宇賀、斎藤両参考人に伺いたいんですけれども、この場合、再調査の請求だけではなくて、従来の異議申立てを残して審査請求と自由に選択できるような方法を取ってもよかったのではないかなというふうに考えるのですが、その点はいかがでしょうか。
○参考人(宇賀克也君) 今回、基本的には審査請求に一元化するということで、再調査の請求というのは、もうその事実の認定に関わるようなものに限定して例外的に残したということだと思います。それについては、その迅速な見直しをそこでするということで、それで、そのような手続では物足りないということであれば、おっしゃるとおり審査請求ですね、これを自由に選択することができるということで対応したものというふうに理解しております。
ただ、先ほど御指摘ありましたように、審査請求ということになりますと、これは基本的に最上級行政庁ということで、かえって不便になってしまうんじゃないかなというその御懸念は大変よく分かります。
ですから、そこにつきましては審理の在り方というのにいろんな工夫が必要だと思います。上京することが困難な場合には、むしろ審理員の方が現地に出向いて審理をするとか、あるいはテレビ会議を行うとかということで、上京することによるその不便さというものを解消する努力が必要だというふうに考えております。
○参考人(斎藤浩君) 宇賀先生の答えに付け加えることはありません。
○吉良よし子君 ありがとうございます。
それでは、また斎藤参考人に伺いたいんですけれども、二〇〇七年に日弁連の方で出されました行政活動是正請求法案の第二節第八条においては、この異議申立てに相当する制度として再考の申立てができるとされていますけれども、この再考の申立てと異議申立てとはどのように違うのかという点、御説明いただければと思います。
○参考人(斎藤浩君) 日弁連も、審査請求、異議申立て二本主義よりも審査請求一本主義の方がいいという、この点は先ほどから申し上げましたように変わりません。
それで、異議申立てを直ちになくしてしまうというのは、特に強調を日弁連内部でされたのは税金の分野ですけれども、税法の分野などでは、直ちに廃止するということについては、日弁連は大きい組織ですから異論がありまして、法案を作るときにもなるべく多数で一致できるように作るものですから、再考の申立てというのを入れまして、それと同じ発想法だと私は考えているんですけど、今度の再調査の申立てというのが入ったと。
再調査の申立て、再考の申立てというネーミングについては、私は再考の申立ての方がはるかにいいと思っておりまして、大分意見を総務省に申し上げたんですけど、その点は聞き入れていただけなかった。聞き入れていただけなかったからといって反対はしないという立場でございます。
○吉良よし子君 ありがとうございます。
先ほど来、そのネーミングについてちょっと問題があるのではという点が指摘されていますけれども、その点、斎藤参考人に是非お願いします。
○参考人(斎藤浩君) それはもう、税金の訴訟をやれば、その他もそうでしょうけど、すぐ分かりますけど、再調査というふうなことをやられますと中小零細企業はもう震え上がってしまいまして、そのこと自身で、弁護士が何を言いましてももう恐れおののくというのが弱い立場の業者のお立場でありますから、私は、なるべく再調査というふうなことは使わずに、いろんなネーミングの提案がございましたが、日弁連では再考の申立てとかその他を提案申し上げたということで、やや軽い話です。
○吉良よし子君 ありがとうございます。
それでは、ちょっと話を変えまして、審理員の話になるんですけど、先ほど来、独立性などの問題で外部の方、活用も必要ではないかという両参考人からの御意見もありますけれども、こうした中で、処分庁や審査庁などからの自立性も求められますし、その担保に必要なことは何だと考えておられるか。同時にまた、この審理員として職務に当たっていくことになる職員の皆さんの育成というものも必要になっていくと想定されますが、そのためにどのような整備を進めていくべきとお考えか、両参考人に御意見を伺えればと思います。
○参考人(宇賀克也君) 審理員の独立性を確保するためのその方策ということですけれども、今回、審理員とそれから行政不服審査会とセットになっております。したがって、その審理員の審理の後、そこに不服があって第三者機関の判断を得たいというときには、御本人が希望すれば行政不服審査会の方でチェックをしていただけるという、そういう仕組みになっています。
そういたしますと、そこで審理員の判断が行政不服審査会によって否定されるというふうなことがあれば、そこで審理員制度のかなえの軽重が問われるということになりますので、そうしたところの行政不服審査会での判断というものが、どんどん情報が公表されていきますと、おのずとそこで、その審理員につきましても、後で審査会のチェックが待っているということで、独立性を確保して公正中立な判断をしようということで、そこでおのずとその独立性を確保しようという方向でのインセンティブが付与されるのではないかなと思っております。
それから、研修等の話、これも非常に重要であると考えておりまして、審理員として必要な要素というのは大きく分けると三つあるかなと考えております。
一つは、法的な素養ですね。様々な行政法を解釈していく上での法的な素養の問題。それから二つ目が、行政の実務についての知識でございます。それも必要ですし、それから三つ目が、まさに審理を主宰して手続を進めていくという上でのノウハウですね、この三つがあるかなというふうに思っております。
それぞれについて必要な研修というのは、例えば外部から来られた弁護士の方であれば行政実務に関する研修というのが重要になってくると思いますし、例えば行政のOBの方のような場合であれば、例えば争訟の審理の手続のノウハウとか、あるいは行政法についての研修とか、そういうふうに人に応じてどこが重点かということは変わってくると思いますけれども、そういった三つの観点からの研修が重要ではないかと考えております。
○参考人(斎藤浩君) くどいですけれども、原局でない官房系、総務部門系の管理職クラスが中央では審理員におなりになると、この方々が、大臣の影響なくして、今の官僚制度の下で独立して、あるいは自主的に判断されるということは私はあり得ないと思っております。
したがいまして、もしもどうしても公務員系を使いたいのであれば、ノーリターンルールといいますか、先ほど挙げました方々は上位に向かって上っていく方々でありますから、そんな方に期待することはできませんので、もうそれ用の方、審理員用の方をつくっていただくということしかないんだと思います。それか外部から登用すると、その二つしかないと思います。
○吉良よし子君 どうもありがとうございました。
終わります。
○又市征治君 社民党の又市です。
大変、お二方、今日はありがとうございます。
実はこの法案については、私ども社民党も民主党さんなどと衆議院においては対案を出しました。その内容の一つが、今もありましたように、今日かなり議論になっておりますように、審理官制度の創設ということを出したわけであります。
今もお話がございましたけれども、政府案の審理員制度でいえば、基本的には各省庁の職員が担うということになっているわけですから、これは公平さの担保が不十分だと。極端に言えば、地方なんかへ行きますと、それこそ公務員の天下り先みたいな格好に、まあ天下りにはならないな、その次の名誉職みたいな格好にされたりという、こんなこともあって、必ずしもこれが目指していることが担保されるということにならない。そういう意味で、私たちの対案は、公平性を担保するためには独立性、専門性の高い審理官制度の創設というものを盛り込むということを申し上げてきたわけですが、残念ながらそうなっていないということがあります。
これはお二方、先ほど来からのお話では、私どもと考え方が同じだというふうに拝聴させていただきました。もし後ほど若干補足いただくところがあればいただきたいと思うんですが。
そこで、まず一つは、宇賀先生にお伺いをしますが、今回の改正では不服申立て適格については現行制度が維持されておるわけですね。また、団体争訟制度の導入については今後の検討課題ということになっております。これらの点について先生はどのようにこれは改善をしていった方がいいと、こういうふうにお考えなのか、まずお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(宇賀克也君) 大変重要な論点だというふうに思います。
不服申立て適格につきましては、現在の判例では取消し訴訟の原告適格と同じ法律上の利益のある者というふうになっております。しかし、この原告適格につきましては、最高裁の判例では、法律上の利益を判断する際に、単に根拠法規によって保護されている範囲に入っているというだけではなくて、その人の利益を個別的に保護しているという個別保護要件があり、この個別保護要件のためになかなか救済が得られないということがあります。特に消費者の利益、あるいは環境的な利益、あるいは文化的な利益、そうしたものについてはなかなか原告適格が認められない。そうすると、この不服申立ての適格も認められないという同じ問題が出てまいります。
この問題についての一つの解決策としては、先ほど御質問の中にもありましたような団体争訟制度ですね、これを消費者保護の分野とかあるいは環境保護の分野で導入していくということが非常に重要な課題であるというふうに考えております。
○又市征治君 どうもありがとうございました。
それじゃ、斎藤先生に次にお伺いをいたしますが、事前に読ませていただいた資料では、今回の改正案は、国民救済拡充の一歩と位置付ける一方で、他方では日弁連の主張と比較すると極めて初歩的な改善にすぎないという御評価をされているようですけれども、先ほども出ましたが、日弁連は二〇〇七年五月に行政活動是正請求法案(仮称)を発表されておるのが基本なんだろうと思うんですけれども、この日弁連の案と今回の改正案との大きな違いの点、これを幾らか御説明をいただきたいと思います。
○参考人(斎藤浩君) 先ほどの宇賀先生への質問へのあれも含めてちょっと申し上げたいのは、先生方の対案と申しますか、そういうものについてももちろん勉強させていただいております。
それで、前政権時代にも案が出てまいりましたときに、日弁連はそれにも賛成しております。もちろん二十年法案にも賛成しております。全て、全部、今の現行法よりも前進であることは間違いないから賛成するわけでありますが、今度は現政権案になって出てきたものと前の政権案のときと比べてどっちがいいかということをもちろん問われるわけですけど。
別にどっちがいいかと言わなくても日弁連はいいわけで、今の現政権案の本法案に賛成だと言えばいいんですけど、議論をいたしまして、今先生がおっしゃった審理官制度についても、非常に優れたよく考えられた案でございますけれども、遺憾ながら審査会が付いていないというのは、やはり二重のチェックというのを、現政権案は二重のチェックでやろうとしているのについて、あえて重装備だと言うんですね、中心的、理論的支柱の先生は。重装備と違うでしょう、そんなものは。審理員と審査会制度が重装備だったら、日弁連案はもちろんそうですし、アメリカや韓国のは何ですかと、こう言いたいということでありますので、審理官制度よりも今の二重チェックの方が私はいいと考えております。
それで、今の御質問については、世界を巡って考えた重々装備案から比べまして、本件のこの二重チェック制度については、現行制度よりもはるかに優れていますけれどもまだまだ足りないところがあって、今日意見陳述で申し上げた最も足りない点は、審理する者、判断する者の二重の構えのそれぞれがまだ不十分であるという点に尽きると思います。
○又市征治君 一番初めのやつは、話は大体お聞きするまでもなかったですから、私の方はこれで終わります。
○主濱了君 生活の党の主濱了であります。
お二人の参考人には、貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。早速質問に入ります。
まず、審理員について伺いたいわけですが、宇賀参考人にまず伺いたいと思います。
第九条の第一項に規定しております処分に関与しない職員というのは、要するに、単に当該事案を担当していなければよいのか。あるいは過去に類似の事件をたまたま担当していた、要するに方向性がもう決まっていると、そういう方をどうするんだと、こういうふうなことも考えなければいけないので、過去において類似の事案を担当していないことをも要件とするのかと、こういうふうなちょっと疑問を感じております。
公正な審理確保の観点から、この度の改正案の妥当な解釈としてどの辺がいいのだろうかと、この辺をお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(宇賀克也君) ただいまの御質問につきまして、この法案の中での九条の審理員の除斥事由に関しましては、まさに当該処分というふうに書いてありますので、そこで問題になっている具体的な処分、これに関与したか、あるいは関与するかという、そういうことというふうに解釈されますけれども、確かにその事案には関与していないけれども過去に類似の事案に関与して、そこで一定の例えば予断を持っているとかという方を審理員として指名していいのかという、そういう御懸念だろうというふうに理解いたしました。
そのような方を指名することは、現行法上、この法案では違法にはならないと思うんですけれども、しかし、やはり運用としてできる限り避けていくべきだろうというふうには考えます。
○主濱了君 公正性の確保という観点からは本当に様々なことが、過去に担当されている方が今回その事案については担当していないんだ、そこでやるということについてはいささかちょっと疑問を感じるものですからお伺いした次第であります。
次は、同様に宇賀参考人に伺いたいんですが、審理員の養成をいかになすべきかと。これは、各委員の皆様、随分出ておりました。中央省庁はもちろんのことですけれども、特に地方公共団体におけるその審理員の養成をどう進めたらいいかと、こういうことであります。
御存じのとおり、地方公共団体は行革でぎりぎりまで人員を削減をしているんですよ。この中で法改正に伴って地方は対応しなければいけないと、こういう状況にあります。地方の行政機関がそれぞれ審理員を養成する何かいい方法がないものかと、こういうことなんですね。
本来、これは総務省に考えてもらうべきことなんですけれども、この辺、いいアドバイスがあればお聞かせをいただきたいと思います。
○参考人(宇賀克也君) 大変重要な点だと思います。
一つは、地方公共団体におきましても行政手続法が適用される部分とそれから行政手続条例が適用される部分がございますけれども、そこで聴聞主宰者という制度がございます。これは事前手続ですけれども、地方で大体総務系の方がされていることが多いようですけれども、そうした聴聞主宰者としての経験を積まれた方というのがこうした審理員としても同じようなノウハウというものが必要になってくると思いますので、そうした方を活用しつつ研修を進めていくということが適切ではないかなと考えております。
○主濱了君 次に、斎藤参考人にお伺いをいたしたいと思います。
今度は、不服申立てに関する救済率についてであります。これも石井委員始めずっと皆さん聞いてこられたわけですが、斎藤参考人は、日本の行政不服審査請求の救済率がアメリカとか、それから韓国であるとか、あるいは台湾と比べて低いという御認識があられると、こういうふうに認識をいたしました。
私は、様々な処分の申請に対して、法令の遵守はもちろんのことであります、法令の遵守はもちろんのことなんですが、様々な事情も十分考慮した上で、妥当な処分を目指してずっと処分をしてきているものと考えているわけなんですよ。
総務省によりますと、不服審査法に基づく不服申立ての処理内容、これ容認率という格好で出しておりますけれども一〇・六%と、こういうふうなことであります。地方においては二・八%、非常に低いということであります。
この辺の、日本の容認率と諸外国の救済率について御所見があれば再度お伺いをいたしたいなと、こういうふうに思います。
○参考人(斎藤浩君) 私の意見を、例えば救済率が高まるということは、行政が誤るか不当な処分をしているからなので、そういうことがない方がいいじゃないかというふうに取るお考えと、それはアメリカも韓国も、日本の行政官庁の公務員と比べて、日本の公務員は非常に優秀で全体を見回して妥当な処分をしておるのであるから低くて当たり前だと取る、両方の考えがあろうと思います。
私は、どうこうする、どういうことを申し上げる能力はございませんけれども、それぞれの国でそれぞれが努力をして、日本の公務員の方々が本当に日々努力しておられることは私も本当によく存じ上げております。その中で、一〇・幾らとか二・幾らなどということはやはり余りにも低いと。何と比べているかというと、あの裁判所でさえ十数%、平均が、これもまた全世界から比べたらえらい低いですなというのでありますが、裁判所より低いなんてことは普通ちょっとあり得ないんじゃないかと。
衆議院の質問の中で面白かったのは、ある先生が、こういう事例について裁判所では救済されているけど、それは行政不服審査の中ではどうだったんだねと聞かれたら、全部棄却されておりますと答えておられます。ということは、何だったんでしょうかということになるので、私はやっぱりもうちょっと救済率を上げた方が、それ誤っているよ、不当だよと言われたことによって、行政は適法化、適正化するんですよね、今後の行政が。私どもは、原告だとか不服審査申立人の救済の率ばかり言っているんじゃなくて、行政の適法化、適正化のためにも救済率はもっと上げた方がいいと私は考えております。
○主濱了君 最後の質問になります。
斎藤参考人にお伺いしたいと思います。
行政救済というのは、処分の諾否、処分が間違っていたとか何とか、その救済だけではないというふうに思われます。経済的なものも含めて幅広くその救済システムが機能するべきであろうというふうに思っております。
処分関係について救済された事案について、仮に経済的な不利益が生じていた場合、併せて経済的な不利益が生じていた場合、その回復はなされるべきであろうと思いますが、どう図られるべきなのか、もしその辺、お考えがあればお伺いをいたしたいなと思います。
○参考人(斎藤浩君) それは法律の行政不服審査の裁決の効果のところの問題とも今の御質問は考えられますし、裁決が出たらそれに従って行政はやり直すということでありますから、当然だと。
私がやった事例では、奈良県の大きなゴルフ場で、二つの自治体にまたがっておりまして、一方の方の固定資産税がえらい上がりまして、片一方の方はそのままと。随分上がったものですから不服申立てをして、そのことを知らなかったのかどうか、隣の自治体は、分からないんですけど、ちゃんと申し上げたら、それはそうですねということで、妥当なところで折り合って、ゴルフ場、非常にうまく経営できるような状態にしていただいたということがありますから、法律の問題の効果の問題と、それからやっぱりそれを、裁決なりを得たときの自治体の職員の柔軟性といいますか、あるいは裁決に至るまでにもう既にそういうことを柔軟に是正していくというような能力の問題がこの法案では試されると思います。
○主濱了君 終わります。ありがとうございました。
○委員長(山本香苗君) 参考人に対する質疑はこの程度といたします。
参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、本当にありがとうございました。委員会を代表いたしまして心より厚く御礼申し上げます。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時四十七分散会